未知の領域:アグネス・マーチン回顧展パート2
…unknown Territory…Agnes Martin’s Paintings from the 1960s
4/14−11/17、2005
Dia Beacon
3 Beekman Street Beacon New York 12508
正方形のキャンバスに淡い色彩のグリッド(格子)を描く作品で知られるアグネス・マーチン(1912−2004)の回顧展全5回シリーズのパート2。パート1は、彼女がグリッドに至るまでの1950年代後半から60年代前半の作品を展示するものだったが、本展は、グリッドのスタイルを確立した60年代の作品を中心に展示する(1957−1967)。
Agnes Martin,
"The Peach,"
1964.
Oil and graphite on canvas,
72 x 72inches (183 x 183 cm).
Dia Art Foundation, New York; Promised gift of Louise and Leonard Riggio.
Photo: Bill Jacobson. Courtesy Dia Art Foundation.
この時期はカナダ出身のマーチンがニューメキシコからニューヨークに移り、ローワーマンハッタンのイーストサイドにスタジオを構えた頃。マーチンのDiaでの回顧展シリーズを企画したリン・クーキイ(Lynne
Cooke)は、リーフレットの中で彼女の当時の様子を、“バーネット・ニューマン、マーク・ロスコ、アド・ラインハルトらのいるアートワールドに突然飛び込んだような状況”と語っている。また、60年代といえばミニマリズムが台頭した頃。1966年、ラインハルトによりDwanギャラリーに紹介された彼女は、ロバート・スミッソンの企画展覧会“Ten”にソル・ルウィット、ドナルド・ジャッド、ダン・フラビン、カール・アンドレ、ロバート・モリスらと共に参加する。これは彼女のキャリアの転機ともなったもの。マーチン自身、自分がアーティストとして成熟するのは1960年過ぎと語る。1967年、ラインハルドが亡くなった頃、
彼女はニューヨークを離れ、再びニューメキシコに移り住む。その間、マーチンの制作は約4年ほど中断する。その後の作品については、この12月より回顧展パート3(1974−1979)が予定されている。
Agnes Martin,
"Garden,"
1964.
Synthetic polymer and colored pencil on linen.
72 1/8 x 72 1/8 inches (183.3 x 183.3 cm).
Hirshhorn Museum and Sculpture Garden,
Smithsonian Institution, Holenia purchase Fund and Joseph H. Hirshhorn Purchase Fund,
2001.
東洋思想に関心があったというマーチン。殊に中国の道教が説く“人は、他者ではなく自分自身の心と精神によって導かれるもの”という教えに影響を受けたという。独自の美学を延々と追求したようなマーチンの作風は、どこかミステリアスでもある。会期を分けてではあるが、マーチンの作品をこの時期に回顧できるのは貴重なものとなるだろう。(Yoko
Yamazaki)