バーンズ・ファウンデーション The Barnes Foundation |
正面玄関 現在のファウンデーションの建物は、フランス人建築家、ポール・クレによるもので1925年に建てられた。© The Barnes Foundation |
300 North Latch's Lane Merion, Pennsylvania 19066
tel; 610-667-0290
website: www.barnesfoundation.org
開館日:金、土、日(9月ー6月)9:30a.m.-5:00p.m.
水、木、金(7月、8月)9:30a.m.-5:00p.m.
入館料:$5、オーディオツアー$7、車の場合、駐車代金$10
完全予約制:ウェブ(www.barnesfoundation.org)からも予約可能。(人数、日付、時間)
この場合入館料は、カード決済。認証番号をもらえるので、入館の際はそれを控えておく事。
バーンズ・ファウンデーションは、フランスの近代美術、後期印象派の重要な作品を網羅するコレクション。ニューヨーク,
ワシントンD.C.の中間地点フィラデルフィアの郊外、メリオンにある。ニューヨークからフィラデルフィアへは電車で約2時間半、日帰りも可能な距離。ワシントンD.C.ヘ向かうのであれば途中下車し、時間に余裕があれば1泊して、メトロポリタンに負けずともおとらないコレクションを持つフィラデルフィア美術館、そしてバーンズ・ファウンデーションを訪れたい。SEPTA
バス、44番ルートを利用すれば、街中からは、1時間30分ほどでファウンデーションのそばに下車できる。
デ・キリコによるバーンズ氏の肖像画、1926年。
シュールレアリズムに多大な影響を与えたデ・キリコは、初期の1910年代の作品が有名。1920年代以降の後期の作品はあまり知られていないが、コレクションの中には後期の小品がいくつかある。この肖像画もデ・キリコ後期の作品。
©The Barnes Foundation
バーンズ・ファウンデーションは、医薬品の開発で財を成した、医学博士, アルバート・バーンズ氏により、1922年に創立された個人のアートコレクション。バーンズ氏の生涯の友人でもあった、教育哲学で有名なジョン・デュ―イが初代の教育ディレクターを担当し、独自の美術教育を展開する。現在の作品展示形体は、バーンズ氏自身によるもので、彼の美術への知識、こだわりを全て反映したものだ。バーンズ氏の突然の事故死(1951)の後は、彼の遺言状により、コレクションの公開に関して厳しい規制があった。しかし、1993年以降、世界へ作品の貸し出しが行われ(日本では上野で1994年に展覧会が開催された。)、近年ではより公開された鑑賞教育を目指しているようだ。
1階入り口すぐのホール風景
© The Barnes Foundation
美術館を訪れると、コレクションの量はもとより、その質と幅の広さにおどろかされる。ギャラリーのひと部屋ひと部屋はけっして大きくはないが、その壁一面はぎっしりと絵画でうまる。脇にはエジプト、ギリシャ、アフリカの作品もならぶ。それらは個人的な収集の域を超え、美術史においても重要な意味を持つものばかりだ。例えば、ヘンリ・マチスによる”Joy
of Life(生きる歓び)"、大きなアーチ形の蓮作壁画、”Dance"。 セザンヌの”Card Players and Girl,"
スーラーの”Model(ポーズする女たち)"など。
ヘンリ・マチス、”Joy of Life"
ピカソの”アビニオンの娘たち”はこの作品に応えるように描かれた。
© The Barnes Foundation
上、スーラー、"ポーズする女たち" :
下、セザンヌ、"Card Players and Girl"
© The Barnes Foundation
マチス、"ダンス"(壁画部分)
© The Barnes Foundation
他にも、マネ、モネ、ルノワール、ゴッホ、モジリアーニ、等など。ルネサンス、バロック時代のティティアー二、グレコなども含む。全てが個人の収集作品だったかと思うと驚かざるを得ない。普段美術館では目にできないような、小さなドローイングも点在する。例えば、ピカソの”アビニオンの娘たち”のための習作を思わせる数点のスケッチ。アーティストたちの試行錯誤を想像しながら鑑賞するのもおもしろい。
2階のギャラリー
© The Barnes Foundation
庭の風景
© The Barnes Foundation
大きな庭には、1940年に樹木園スクールを創立したバーンズ氏の妻の功績を反映し、四季折々の樹木が訪れる人々の目を和ませる。ファウンデーションの所在について、フィラデルフィア中心街への移転のはなしもささやかれる。しかし、都市部を離れ、他の仕事を辞してなを美術の収集、鑑賞に専念したバーンズ夫妻の存在があったことを思いはかるためにも、現在の場所を維持してもらいたいものだ。
(Yoko Yamazaki)