2006年イセ文化基金 アート学生展 シンポジウム
篠原有司男/エリック・C・シャイナー
8/26、2006
1:00−3:00
2006 ISE
Cultural Foundation Art Students’ Exhibition Symposium
"How to present yourself as an Artist
after Art School"
シンポジウムは,第二回イセ文化基金による美術学生を対象とした公募展の授賞式に先立ち行なわれた。卒業後のアーティストとしての生き方がテーマ。講演者は、アーティスト篠原有司男とインデペンデント・キュレーターであり、アート・アジア・パシフィックのシニア・エディターでもあるエリック・C・シャイナー。それぞれのスピーチのあと、会場からの質疑応答が行なわれた。
© 2006 S. Yoshida
アーティストとしての評価よりその生き方を重視する篠原は,実生活の様々な葛藤を克服しつつ見る側に生きるための糧を与えるのがアーティストとであると述べた。
ラウシェーンバーグ作コカコーラ・プランのコピーにまつわる20代の頃
のエピソードや、
最近作の
鎌倉近美での“セザンヌについて語る2匹のかえる”に関する逸話等を披露しつつ、直感を信じ、発想、きっかけ、イマジネーションを追い求めよと語った。
© 2006 S. Yoshida
篠原の語りの中には1950年代半ばから60年にかけての戦後の日本の前衛的な気風が強く感じられる。時代性がアーティスト篠原有司男の誕生のきっかけのひとつだとしたら現代の状況はどうだろう。アーティストが生まれる土壌とは?何がアートチューデントをアーティストにするのか?シャイナーは、答えは決して一つではないと語り、混沌とした現代の美術界に向け—それは往々にしてビジネスライクな世界でもあるが—自己を掘り下げ自身を一つのパッケージだと思い提示してみよとアドバイスする。
© 2006 S. Yoshida
質疑応答の中,篠原は,美術界は常にそれをひっぱっていくスーパースターが必要なもろい世界でもあると分析。そのスーパースターへの期待感が美術界を操作することも否めない。
シンポジウム参加者には留学生も多く,様々な文化が混在するニューヨークに在り、アウトサイダーとしての自己、あるいはそこにとけ込もうとする自己のバランスについても話題は広がった。共に,海外に留学経験のある篠原とシャイナーは、(篠原は1969年よりアメリカに渡る。シャイナーも日本の大学院で美術史を専攻。)それぞれの体験から、自己の所在を見極めそこからどの様に展開していったかを語った。“自己を探求すること”それが、今回選抜された75名のアーティスト(あるいはその卵)へのメッセージのようだ。(敬称略/Y.Y)