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-CONCEPT- OLD記事

フェスティバル・モーターサイクル

Festival Motorcycle

 

1983

 

200 x 576  cm

 

カートボード・アクリル・ポリエステル樹脂

 

ニューヨークの次郎長

 

第45回  増川の仙右衛門

 そのママなる、カバを思わせる真黒で、てらてら光った顔の大女が、のっそり表れ、ぎょろっと、ちょんまげ頭の二人をねめつけ、娘の腕をつかみ連れ去ってしまった。 向うから三歳ぐらいの黒人の子供たちが六人、揃いのデニムの上下を着せられ、一列横隊で乗り込んで来た。 健康そうな肌、大きな目、真白な歯並びが、いかにも喰い盛り、いやこの口から、すばらしいハーモニーで歌が流れ出すかも。 未来のマイケル・ジャクソン兄弟だ、いや冗談抜き、本当にどこかのステージに出てるのかもよ。 


 西洋式お化けは、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男と相場が決っているから、ガキにも飽きられてしまっているが、このゴリラ女は、鬼吉のお気に入りだ。 一段高い所で、ひょうの毛皮のビキニの女が、手錠姿で、保安官に捕まっている。 彼いわく、実は、この女はゴリラの化身で、今、この小鼻の中で変身するから、入って自分の目で確かめて見ろ。 しかし、いつ暴れ出し逃げ出すかも知れないので、俺は、こうして手錠と拳銃を持って見張っているんだと。 暗がりで、素早く、ゴリラの毛皮をかぶると、ギァオーと、下手糞な密林の風景画をバックに、歯をむき出して現れれば、悲鳴をあげて、子供たちは四散し、出口に向って逃げてしまう。 こんな見え透いた出し物で五十セント、百二十円もふんだくるなんてあこぎな連中だが、金髪、合いの子の肉体美ゴリラが鬼吉のお目当てである。 


 空からも、悲鳴が落ちて来るではないか。 言わずと知れた恐怖のジェットコースター。 今日は祭日とあって、三つとも修理して、フル運転。 ゴンドラ展望車も、高い所にお客を釣り上げては、ゆするので、もうスリル満点、潜水艦が、水しぶきと一緒に水面に跳ね上れば、中で上げる悲鳴を、拡声器で外に流すから、そのうるさいこと。 笑い女も、録音の花形だ。 ケースに入れられた等身大の人形が、身をよじって、朝から晩まで、大笑しているのだが、テープのボリュームは一杯に上げられ休み無し。 そばでキップ売りのおじさん、よく頭がおかしくならないもんだと、他人事ながら、心配になって来るではないか。 


 照りつける太陽の中を、長さ二キロの例のマラソン桟橋は、裸の大群が流れ、桟橋を支える木製の支柱の林の間は無料脱衣場だ。 湯のシャワーや石験を使えるところは無いから、橋の下が嫌なら、自家用車の中か、家から水着でやって来るしかない。 


 苺たちは、チャイナタウンで買った、肉まんとあんまんじゅうを、たこ目の昼飯代りに置き、どうしても次郎長親分にお目に掛からねばと迫る男性月刊誌、国際男の記者、増川の仙右衛門を連れ、コニーアイランドにやって来た。 


「わあ、これはすごいとこだ、初もうでみたいな人出だ、海水浴だと云うのに、海が、どこにもありませんねえ、いやあ、ボインばかり、美人がいますねえ、彫が深く、あの情熱的なひとみ、足も長いし、肌の色なんか、目じゃあない、これなら日本に全員連れて来りゃあ、引っばりだこ、銀座のクラブなら、ナンバーワン確実、こりゃあちょっとした宝の山ですなあ、しかし暑い、冷っこいビールでもどうです、私がおごりましょう」


「よし来た、生がきにビヤー」


 満員のカウンターを避け、四人は六個ずつむき立ての、かきとはまぐりを紙皿に、ビールを手に手に、道路の端に座り込み、ぐっと一杯といったところ。 苺はすでに、ごみかごの陰で、さっさと脱いで水着姿、色白、すらりと、よく伸び育った若い肉体、染めた金髪を思い切って狩り上げ、赤い口紅、派手なビキニ、赤い苺のイヤリソグがよく似合う。 一見国籍不明、歩いていても向こうから、口笛の一つも掛かる程、決まっている。 梅次、豚熊も上半身裸。 二ヶ月間、石松のお化け屋敷作りで扱き使われ、ばっちり赤銅色(しゃくどういろ)で格好いい。 だが仙右衝門はワイシャツの腕を捲り(まくり)上げるのが精一杯。 重いかばんを肩に、片手にカメラ、黒革靴のいでたちでは、さぞかし暑いだろう。 


「ねえ、はまぐり、生で食えないだろう」


「アメリカのは大丈夫、おいしいわよ、もっと買って来ましょうか」


 連れられて仙さんは、大きな財布から二十ドル札を出し、追加を頼んでいる。 


「パトロールの騎馬警官も、長靴にヘルメット、さぞかしだな」


 仙右衛門が、カメラを向けると、馬が、道の真中に、ありったけの糞を噴出してしまったからたまらない。 


「ひゃあ、これじゃあ、せっかくのかきの味も台無しだわ」


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