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-CONCEPT- OLD記事

  連絡線 1975

キャンバス、アクリリック、コラージュ

40 X 50 cm

 

ニューヨークの次郎長

第21回  次郎長一家売出す

高下駄の久七の情婦、すだれの猿は、火消しのはっぴを着た、三人の子分を従えて、入って来た。 ゴリラの毛皮のコートの下に着た、真紅のタイツが、肉付きの良い中年の体を際立たせ、一瞬、皆なの視線を集めるのに、十分効果的衣裳だ。

「次郎長さん、今晩のショー、大成功のようでお目出度うございます。 外人さんは、皆な、目を丸くして、びっくりなさっていますねえ、さすが親分、全然衰えていませんねえ、これだけ派手な演出、充実した出物が揃えられるなんて、さぞかし、良い子分が大勢いなさるんでしょうねえ、次郎長ここに在り、これだけ強く、客人がたに印象付けなすったら、このニューヨークじゃあ、あとは順風満帆、一流芸術家として、矢の様な出発が、約束されてますよ」

「やけに、お世辞がうまいのねえ、今日の猿さんは、何かたくらんでおいででしょう、きっと」

「いいえ花子さん、うまいのは、あんたの日本語ですよ、まあまあ、次郎長一家の皆さんも、私たちも、同じ日本人じゃあ、ありませんか、この狭いニューヨークで角突き合せていてもしようがないし、とにかく高下駄の久七親分からよろしくと、この祝い酒をあずかって来ました、天皇様も召しあがると云う最高級の日本酒ですよ、皆様でやってくださいましな」

「へえ-、すげえや、金粉、いや金箔みていなのが、キラキラいっぺえ入っているじゃあねえですか、親分、どんどん開けて飲みましょうよ」

「有難うござんす、すだれの猿さん、有無たく頂きますよ、鮫、しばらくあちらに飾っとけや、後でゆっくり頂くとしよう」

「まあ、遠慮しないで、皆さん、どんどんやってくださいましな」

 猿は自分で封を切ると、子分共の茶碗に注いで廻って行った。 大かたの、目星い、招待客の中の重要人物も帰ってしまい、やはり地元在米日本人芸術家の皆さんが目立つようになると、次郎長も、ほっ、と一息入れたくなった。                           

「ああ肩が凝ったぜ、もう飲んでもいいだろう、さあ皆さん、肩の凝る芸術論は、いい加減にして、いっちょ、流手に飲んでくだせえ、今日はイースター、キリスト様も、次郎長様も、復活するよき日なんですぜ」

 日本人同士の気安さから、話声も大きくなり、飲み喰いも、一段と活発になってくると、顔を真紅にしているやつも目立ち出した頃、長身の黒人が、一人だけ、マントに身を包み、ゆうゆうと作品を鑑賞していたが、やがて隅の地獄活人画の黒幕の中に姿を消してしまったが、しばらくして、青鬼にさせられていた、ふんどし姿の忠助が、がたがたととび出して来て、怒鳴った。

「親分、あの野郎、パーティー荒しだ」

「ええ」

 皆なの視線が、一斉に黒幕に向けられた。

 静静と現れた黒い大男を見上げた、行水中の牡丹と苺は、ぎゃあ-と、ジェリービーンズ風呂からとび出してしまい、あたりに、飴が散らばる中を、マントを取った黒人は、チョコレート色の全裸、しかも、自分の長い、一物を、畳針で、横から串刺しにし、汚ないひもで、公園から拾って来た月桂樹の枝を、針に結び、引きずって、のっしのっしと歩いて来るではないか。

「まあ、素敵ねえ、このパーティーの雰囲気にぴったりですこと」

 猿が、にやっと笑って云った。

 

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