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-CONCEPT- OLD記事

 American Dream

 

アメリカン・ドリーム 

1975

キャンバス、アクリリック、コラージュ 

40 X 45 cm

 

 

 ニューヨークの次郎長

第17回   次郎長一家売出す

 ニューヨークに春はない。いや、今日は、花咲き乱れる、すばらしい四月の陽気なのだが、昨日は、みぞれまじりのお湿りだった。大雪や、竜巻の大量来襲で、田舎町はめちゃめちゃに壊され、車も家も吹き飛ばされましたと、泣き顔のおやじがテレビに映っている。一方、テキサスやマイアミは、カンカン照りの猛暑だと云う。一体どうなってるのこの国は。 

 セントラルパークに花見にでも出かけ、浮かれようとしたが、気温は急上昇、上着、ワイシャツを脱ぎ捨て、Tシャツ一枚にさせられてしまった。そんな所で、上野公園よろしく、夜桜見物などと、しゃれたつもりが、ナイフ片手の強盗が、わっと押し寄せ、身ぐるみはがされ裸にされるのがおち。ムードもへちまも無いこの季節感。厳寒の冬と、灼熱地獄の夏とが、隣り合せで、すぐやって来ちまうんじゃあ、のんびり、鼻歌まじりに、五月のしょうぶ湯に漬るなんざあ、遠い異国のお話。

 そうか、銭湯が無えんだなあこの国にゃあ、よし、ロフトに浮世風呂を作ってやろう。

 とうとうイースターサンデー、復活祭がやって来た。フィフスアベニューでは、パレードの楽隊が行進、見物のため、群がる善男、善女たち。一方、こちらソーホーのグリーンストリート5百番地、次郎長復活祭の準備は万端、六時開場。日本だったら、さしずめ、テープカット、主催者のごあいさつと云ったところだろう。汚ないビルの入口に、二人の子分がはっぴを着、長の字を染め抜いた鉢巻をしめ、すご味を利かして、立ちはだかっていた。

 招待状持参の入場者以外は、堅くお断わりいたします。さもないと、ただで酒が飲める、しかも普通、値段が高くて手の出せない高級日本料理付きだと知ったら、それこそ、ソーホーの町飢えた貧乏絵描きが、わんさと馳せ集まり、大混乱必至。先輩鶴吉の忠告に従い、黒人、プエルトリコ人、チャイニーズなどの移民群は、一人も入れるなと云い付けてある。だから地元純粋アメリカ人か日本人に限られることになる。それこそ、人種偏見もいいとこ。

「親分」

 飾り付けに、汗だくだくの大政が駆け込んで来た。

「親分、これだけ、金をかけた作品が揃ったんだ、なるべく、たくさんの人に見てもらうべきですよ、招待状を持った人だけじゃあ、ちと惜しい気がしますがねえ」

 三階の次郎長のロフトの窓から見下すと、祭日の人出で、街は一杯である。

「見てくださいよ親分、芸術も中華まんじゅうも、区別のつかねえのばかりですぜ、ああいう連中にこそ、芸術の何たるかを、教えるべきじゃあありませんか、日本の次郎長ここにありとばかり、看板を作って、子分の二、三人に、サンドイッチマンやらせましょうよ」

「大政、お前、素人なんだよ、芸術は、日曜画家と違うんだ一般大衆に、サービスしてる暇は無えんだあんな連中はなあ、絵なんか買うより、おまんま喰うのが、やっとなんだ、仏心出して、ロフトに引っぱり込んでみろ、帰る時にゃ、カメラ、電蓄、時計、日ぼしい品物は、かっばらわれて、無くなってるのがおちさ、頭冷やせ、馬鹿野郎、大切な、本命のお客様までが、俺っちの教養を疑って、絵も見ねえで、さっさと帰っちまうよ、一度そうなったら、何度、パーティーを開いても、連中から、見向きもされねえのさ」

「そんな、お偉方が、今日、来なさるんですか」

「あたりめえよ」

「アメリカでも、昨今、最高級の、知識教養を身につけた、インテリ連中は、しかも、東洋、とくに、日本に関する、すなわち、藤原時代や、鎌倉、戦国、桃山、元禄など、又は、源氏物語絵あたりから、さかのぼって、茶道、琳派の粋、江戸文化に至るまで、勉強なさった連中で、少なくとも、実際に、高い金を払って、奈良、京都に、何度も、旅行しなすった人人で、彼等こそ、次郎長芸術の本当の価値を、理解出来なさるんだ。 一歩間違えれば、俺たちは、ただの道化、商店街の宣伝チンドン屋ぐらいにしか取られねえんだぜ」

 

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