• N
  • TCg^c
  • vCoV[|V[
  • [
-CONCEPT- OLD記事

チョッパー

Motorcycle Chopper

1999

 

 

ニューヨークの次郎長

第13回   黒髪の踊り娘

 

「鮫、お前、夏が待ち遠しいんだろう、馬鹿野郎、苺が絵描くときは、鮫は、屋上に縛りつけとくからな」

「いいなあ苺ちゃんは、そんなに情熱があって、夏は、ヨットで地中海かなんかに行きたいなあ」

「大政は、アメリカが嫌いなのか」

「嫌いってわけじゃあないけれど、ヨーロッパもいいぜ、第一 人間が温いし、しかも美人が多いよ、背の高さだって、日本人向きだ、パリの五月、思い出すなあ、花のパリ、あの娘どうしたかなあ、バーで会ったんだ、キエフから来た留学生」

「ロシヤ人か」

「ウクライナ産のベッピンよ、大恋愛してさあ、そのまま俺は、キエフについて行ったんだ、大森林があって、物価が、べらぼうに安くて、雪の中を、馬車で飲みに行くんだぜ、ウォッカのがぶ飲みさ、若者は皆な、アメリカに行って見たいと云っていた、何も知らねえからな、俺の滞在期間が切れてよ、それで終っちゃったのよ」

「哀れねえ、恋愛なんかするからよ、動物臭い話ねえ」

「じゃあ苺、お前、恋愛したことないのかい」

「最低よ、そんなもの」   

 ウェイターのいない、ここでは、カウンターで買い、各自、テーブルに運ばなければならない。 端席の豚熊は、皆のグラスが空になる度に、金を集め、カウンターまで買いに行く。 バーテンのトムは、上機嫌で、知ってる日本語全部を喋りまくっている。 おはよう、ままさん、さけ。 そのうち京浜急行線の駅名を、ヨコハマ、オッパマ、ツルミ、カワサキ、とやりはじめる始末。 客の気に入ったバーテンには、おごってやる習慣のアメリカなので、飲めよ、と云うと、レミーマルタンをワンショット、一気に飲み干す。 そうだろう、一晩に、おごりだけでも五十杯は飲ませられるんだから、安酒あおっていたんでは胃袋に穴があいてしまう。

 バー内の壁に取りつけてある、どぎついネオンサインは皆、ビール会社のもので、日本でもおなじみの、バドワイザーや、ハイネッケンが、酔客をまぶしく照している。 便所の上のネオンだけが星条旗だが、黄色い星の部分は電気が付かない。 近づいただけでも、ぷんぷん臭い緑色のドアーから、水が流れ出している始末で、中はもう、足の踏場もない。 壊れたドアーの取手を、金属の栓抜きで直してある。 女性の方は、バーテンにカギを借りなければ閃け開けられない。 トイレ内のイザコザは日常茶鋲事のアメリカなんだ。

 充分飲んだ連中は、二手に分れ、次郎長は鶴吉の誘いで、やぼ用。 大政たちは、三軒隣のストリップ小屋に向った。

鶴吉は、チャイナタウンに賭場がたくさんあることを知っていて、親分だけを誘ったのだ。 キャナルストリートを東に向い、二、三丁目抜を上ると、右側が全部、アメリカ随一の大チャイナタウンで、水が全開の消火栓から滝の様に、野菜のくずやごみを押流し道路は火事場のようにびしょびしょ。 テレフォンブースの屋根に竜が二匹、公用電話とある。 漢字だらけのこの街では、、チェスマンバンクも、大通銀行と改められてしまう。 中心のモッツ通り(MOTT-ST)が銀座に当り、大小のレストラン、スーべニール店など、ぎっしり軒をつらね、深夜でも、オールナイト営業のレストランの明かりがポツンポツンと見える、賭場は、ビルの地下にあった。 一日が終り、溜ったゴミが全部、道路に吐き出され、清掃車を待っている、道など通れたものではない。暗い階段を下りると、小窓から覗いていた見張りが開けてくれた。 ここは西洋人御法度。 三つぐらいドアーを通過すると、紫煙もうもうの中に、活気に満ちた別世界があった。 くわえたばこの、じいさんが、ナベのふたの中に、たくさんのワイシャツやボタンを入れて、かき回している。 ボタンを四つずつ引いて行き、最後の奇数か、偶数の、どっちかに張る。 次郎長はテーブルに近づき、懐の百ドルを元手に、数分で百万円までにしてしまった。

「さあ、パーティーの資金が出来た、二度と来ねえよ、俺様は、アメリカに、こんなことしに来たんじゃあねえからな」

 


Copyright (C) 1999-2010 New-York-Art.com All rights reserved.