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-CONCEPT- OLD記事

密林のパーティー 

Party in Jungle

1999

95 × 71 cm

 

 

ニューヨークの次郎長

第11回    ロフトの大家はマフィアであった。

 

親分と一緒に住めると聞いて、大喜びの子分たちが、どんどん、安アパートを引払い、荷物を持って集まって来た。

清掃人夫に金を払うのが嫌さに、夜中に、自動車に積んで来た、古道具や、冷蔵庫、ガスレンジ、電気スタンド、家改装のため取壊された材木のたぐいが、ネズミの死体と共に、道路わきに山積になって捨てられている光景は、ニューヨークが、いかに世界最大の消費都市であるかを、如じつに、物語っている。

 とにかく、三段ベッドの蚕棚作りに必要な材木は、すべて道路から調達。 電気ノコギリとカナヅチの音が、景気よく、ロフト中に、響きだした。

「いいぞ、いいぞ、その意気だ、これでなきゃあ、自分のベッドを、ドアーや囲いで仕切って、女、連れ込むんじゃあねえぞ、タバコ吸うやつは、一番上の段だ、合計十二人か、たいした人数じゃあねえか、なあ、鶴」

大政、鮫助、豚熊、忠助、鬼青、玉四郎、紅一点の苺、あとはそれぞれのダチコらしく、次郎長にはわからない。

 材木までか、マットレスまで拾って敷き、めいめい、ごろごろ横になり、首だけ、こっちに向け、ペチャペチャ楽しそうに、おしゃべりに余念のない子分共を見ながら、よし、これなら、何か、おっばじまりそうだ。 とほくそ笑んでいたが、四月の馬鹿陽気で、すごい臭気が、拾ったマットレスから、わきはじめた。 とにかく安いんだから仕方がねえ、我慢我慢。

「皆な聞け」

 次郎長が怒鳴った。

「ここニューヨークじゃあ、日本での、ああだ、こうだ、は皆、忘れっちまって、零から始めなけれあいけねえと、久七親分の忠告だったが、こりゃあ本当だ、日本あってのこの次郎長も、ここじゃあ、一兵卒の駆け出し者、今度、都鳥常吉さんの、お力添えで、着いたばかっりの俺が、こんな、地の利を得たすばらしいスペースを手に入れることが出来た、ここで、ただ住んで飲んで、喰ってたって、お天道様に中しわけねえ、一日、一刻が、俺には貴重は気がする。 なにか、このロフトを使って次郎長一家ここにあり、とばかり、大花火をニューヨークに打ち上げようじゃあねえか。 えー、どうだい今までは一人一人バラバラで朝っぱらからアルバイトに精出し、夕方、帰っても、ガランとした、さびしいホテルの部屋か、安アパートの一室、疲れた体じゃあ、新鮮な、創造意欲、アイディアなんざあ、浮かばねえやそんな調子で、一生働いたって、しようがねえ、だが、これからは、一味、違うぜ、これだけの大勢、気の合った若者が一緒に がーんとぶつかりゃあ、何とか、道が開けるってもんだ。 鮫助、おまえ、一年近くニューヨークにいて、少しは絵でもこさえたか」

「何も」

「豚熊、お前は」

「デッサンを少々」

「デッサンなんて、紙切れ使った、小手先のいたずら描きよ、ここじゃあ、糞紙の役にもたたねえよ、手前の体をもろにぶつけた大作を、たっぷり披露しなけきゃあ、そこでだ、このロフト全体を作品化しちまって、お偉方を招待し、盛大なるパーティー兼、ロフト開きにしようじゃあねえか、今や四月、 四月といやあ、目に青葉、山ほととぎす初がつお、ってえのが日本だ。鶴、アメリカはなにかねえか」

「イースター祭りでやんす、それに、アスパラガスもではじめますかな」

「そりやあ一体、何だ」

「復活祭と云って、十字架に、はりつけにされ、槍で殺された、イエス・キリスト様が、もう一度、生きて現れる、すなわち復活なさる日を祝う、クリスマスに次いで、盛大な祭で、じめじめした寒かった冬が明け、花の季節到来とばかり、皆さん、花で飾った帽子をかぶり、五番街、フィフスアベニューは毎年大変な人出でさあ、それに、兎や、彩色タマゴ、ジェリービーンズ飴を子供たちが交換し合って騒ぐんで」

「そりやあ、何時だ」

「何でも、春分の後の、満月の次の第一日曜、今年は四月二十二日でさあ」

「よし、次郎長の復活祭も、その日に決めた、まだ一週問ある、さあ準備に取りかかろう、お前ら何でも、好きなものこさえて、所狭しと並べろい」

「でも、金がかかりますからねえ」

「だから、何でも、手あたり次第、拾ってきて、絵具でも何でも、塗りたくりやあ出来るだろう」

「ペンキだって高くつきますぜえ、それに親分、パーティーしようにも、コップもなけ.れば、椅子、テーブルもない、それより俺たち、今日からどうやって、めし炊いて喰うんです、ヒーターもないし、カマド作ってまき拾って来て炊くか」

鮫助の云ってることは、事実だ、鮎郎ひねっても、さびついてい鉄管から出てくるのは真茶色の水ばかり。

「一体、何年この水道使ってなかったんだろう」

「ああ、お茶も飲めねえのか」

 俺の復活祭だと、大見得を切ってみたものの、子分たちは、めいめい三段ベッドから首だけ出して、不安そうに親分を眺めているだけだった。

「まあ、しよっペえ事を話し出したら限がねえや、ここにお前らから取り上げた宿代がある、よし、俺のおごりだ、アメリカの バー ってものを一つ見学してやろうじやあねえか」

 グッドアイディアとばかり、すでに、ステテコ、パソツいっちょで、寝る準備をしていたものまで、酒と聞いて、むくむく起上って、外出準備に切替えてやがる。 まかしてください、と鶴のガイドで、三丁ほど南に下ったキャナルストリート(運河通り)にある一軒に、ぞろぞろ向った。

 

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