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-CONCEPT- OLD記事

テーブルを囲んで

Party at outside

1999

95 × 70 cm

 

ニューヨークの次郎長

第10回

 

「どうだ都鳥、元気か、何もロフトに変わったことはねえだろうなあ」

「すべて順調だよ、今日は、俺の日本からのダチコを紹介するよ」

「ヤクザの絵描きだな、見れば解る、ちょんまげ、長脇差(ながどす)も知っているよ、大戦の時、俺はフィリピンで、お前らの親父たちと戦ってたんだ、凄かったなあ、あの戦場は、真夜中に、俺たちのレーダーを除けるため、日本空軍が、超低空飛行でパラシュート部隊を降下させるんだ、地上に着くまでにパラが開かないやつらは、ドスン、ドスンと音をたてて野原にめり込むんだ、一、二、三、四、皆な即死だ」

「その話は何度も開いたょ、ジョー、ドスン、ドスンの音が、今でも耳から離れねえんだろう」

「一、二、三、四、常、ワイフは元気か」

「毎日稼がしてる、今日の話は、日本からの親友に、今のロフトを譲ろうと思う、俺は、パリに行くんだ 」

「パリかそりゃあ、いい、OKだ、家賃は上げるぞ、今、4百か五百で、今日、二ヶ月分払うんだな」

「次郎長さん、ジョーがすんなりOKしたぞ、笑顔作るんだ、怖え顔すんな、気の変んねえうちに、千ドル、渡しちまいな」                          .

 千ドル取られ、次郎長は、完全に、スッテンテンになった。鶴吉が、リースべ-バーにサインしたいと云ったが、相手は何も聞こうとしないし、千ドルの受取りさえよこさない。 常吉は、サンキュウ、パイパイ、を繰返し、二人を引っさらうように、外にとび出した。

「よし、決った、次郎長さん、これでお前さんも、一家のねぐらが、この大ニューヨークにできたわけだ、来月まで五日あるが、ロフトのカギを渡すよ自由に使いな、邪魔だったら、俺の絵は、隅にやっといてくれ、じや、あばよ」

 カギを握りしめ、面くらっている次郎長のそばを、昼飯の終えた連中が、ほこりだらけの道を、トラ

ックをスタートさせて、出て行った。

「鶴吉、世話かけた、俺は、この街のやり方が気に入ったよ、や、占い気取りで云うんじゃあねえが、方向が向いてるみてえだ、金はふんだくられて、今はオケラだが、ロフトが手に入った、五や千の家賃なんざあめじゃねえ、よし、もの凄えことを、おっばじめてやるぜ」

便所しかない、ガランとしたロフトに、大政、鶴吉と、牛乳箱に腰を下していた次郎長が、

「なあ、こんな馬鹿でけえ空間だ、何か面白えことが出来そうだなあ、鶴、いい知恵貸せや」

「そこなんです親分、とにかく、金は一銭もねえ、ニューヨークで金が無きゃあ、野垂れ死にでさあ、それとも、地下銑の入口で、両手を地面について、右や左のだんな様、どうかお恵みを、ってこじきしなけりやあ、酒はおろか、ホットドッグ一本だって、ありつけませんぜ、まして、パスポート、ビザ、のはっきりしてない、こちとらだ、失業手当なんかなし、教会の救済食でも喰わせていただくために、臭えバムこじきと、一緒に、何時問も並び、お説教を聞かされ、まずい飯にありつくのが、やっとですからねえ、それこそ、高下駄の久七一家のやつらが、それを見たら、手えたたいて大喜びでさ」

「馬鹿野郎、この次郎長が、そんなことになって、たまるかよ」

「親分、名案があるんですよ、こんなでけえロフトだ、便所の横のスペースに、かいこ棚式の三段ベッドを四、五棟作り、散らばっている子分共を集めて、一日一ドルで貸すんでさあ、一カ月三十ドル前払い、十人も集めれば、三百、食事代など、別に取り立てれば、五百や千ドルぐらいにはなりまっせ、連中だって、狭苦しい安ホテルに較べりやあ、のびのび出来るし、いざ、ってえ時にあ、心強いでしょう、大勢いた方が」

「そいつはいい、すぐ電話で集めろ、思いついた事は、片っ端から、やってみようじやあねえか」

 

 

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