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-CONCEPT- OLD記事

スクーターライダーの苺を狙う怪鳥

Taking a strawberry from biker

1999

76  × 76 cm

ニューヨークの次郎長

第7回

ロフトの大家はマフィヤであった

 

 「親分、ロフトが見つかりやした、これあ掘出物ですぜ、いま時こんな良い話は、めったにねえ、何としてでも借りちゃいましょうや」                ′

 「ロフトってえのは、一体何だ」

  そこで鶴吉、調子に乗って、

 「仕事場でさ、世界中の絵描きが集まり、うの目たかの目で、だだっ広い、良いロフトを見つけようと、この辺は大変な騒ぎなんです、もっとも最近は、億万長者の息子ばかりが集まって来やすから、やつらは金のカで、自分の気に入ったのを手に入れ、改造し、プールまで部屋の中に作ってるのがいるらしい、当ったロック歌手だの、弁護士や、歯医者までが、遊びでスペースを欲しがる始末で、こちとら本当に仕事をしたいアーティストは、家賃のべらぼうな値上りで、締め出され、泣く泣く、河向うの、ブルックリンやブロンクスに移って行きますがね」

「へえ-、こんな汚ねえとこがねえ」

「都鳥の常吉が、自分のロフトを売りてえとかで」

「一体、いくらだ」

「百万円、4千ドル欲しいんだと、これは権利を売るんで、その後、常吉と大家に会い、正式に家賃を決め、カギをもらい住む、と云うわけで」

「仕方がねえ、有金はたいて、そいつを手に入れようじやあねえか、ホテルやアパートじやあ絵は描けねえ」

場所は、プリンスストリートとスプリングストリートの中間で、グリーンストリートにあった。 直訳すると、王子通り、春通りの問で緑通りの五百番地とのこと。 ピカピカのレストランやブティックに挟まれ、ぽつんと取り残された三階建のボロビル、入口に、誰かの捨てた材木、大きなギャべッジ袋が投げ出され、鉄格子のはまった一階に、大工らしい者が、裸電球の下で、ごそごそ働いていた。 ガタピシのドアーを開けて入ると、階段が、一直線に屋上まで伸び、外がまぶしい陽光だったせいか、目が慣れるまで、真っ暗で何も見えない。 電球もなく、埃と、えたいの知れない臭いが充満、ここも百年はたつ古ビルのはず、誰も掃除などしたことがないんだろう。 どら猫が、足元を駆け抜けて行ったのに驚かされながら、とにかく三階の、常吉の待つフロアーまで、手探りでたどり着いた。

「常、次郎長さんでやす、開けてくだせえ」            一

 二十個以上ある窓から、大量の光が入り、よりだだっ広く室内を見せている。家具らしいものは一つもなく、正面右隅に、トイレがあり、壁に二十点近い抽象画がかかり、都鳥常吉は、グレーの三つぞろいの背広を着こなし、ぴしっと決めて立っていた。

「これは広い、なんて広さだ、このビルの三階全部がアトリエなんですねえ、お久しぶりです、常吉さん」

「よう、次郎長さん、金髪を抱いたか」

「着いたばかりで、まだなんで」

「駄目だ駄目だ、女、抱かなきゃあ、この国は解らねえ、白いの黒いの、黄色、中間色、オポテ、メキシコ、中南米、ここは何でも揃ってるぜ、黒人抱きゃあ、それからは黒人がなんとなく友人に見えて来る、怖え怖えと遠巻きにしてるから、殴られたり、盗まれたりするのよ、ま、女の口説き方は、俺が授けてやる」

 

 

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