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-CONCEPT- OLD記事

海岸のバーベキューパーティー

B・B・Q Party on the Beach

1999

50 × 36 cm

アクリル・キャンバス

 

ニューヨークの次郎長

第1回

   石松、お前は後から来い

 

「親分、もう日本は駄目だ!」

「そう早まるな」

「こうなったらアメリカにでも長い草鞋(わらじ)を履きましょう、この清水港、いやこの銀座、新宿界隈にあっしらのねぐらはありやせん。 関八州(かんはっしゅう)取締役特別探索班次郎長一家係に、こう追かけ廻されたんじゃあ、いっそ、太平洋の向こう岸、地球を半廻りしたアメリカ大陸、ニューヨークにでも落ち行きましょうぜ。」

「それもそうだなあ、やることなすこと全部裏目に出やがる、ところで石、お前旅費はあるのか」

「げんこつだけで」

「俺は来週立とうと思う、すぐ追って来い、奉加張(ほうがちょう)こさえて泣きつきゃ親類縁者だ、友人だ、何とかなるぜ、アメリカに行くんだ、下手したら一生生きて会えるかわかったもんじゃねえと泣きつけ、五円ぐらい貰(もら)えるだろう」

「とにかくやってみやす」

  青山五丁目の角から西方に富士山のシルエットがくっきり浮ぶ、道に迷うことはねえ、まっすぐ貫けば 千駄ケ谷の駅だ、二人はぶらぶらと下りて行った。 月星ゴムのネオンの上に本物の月があがり情けない二人の背中を照しているではないか―-。

 成田空港に現れた次郎長は、すっかり旅支度が出来上がっていた。 すなわち、白地の単衣(ひとえ)ものに小倉(こくら)の帯、手綱染めの上三尺(うわさんじゃく)、草鞋履き、紅い傘を被(かぶ)り、緑色の振り分け荷物の中は、着替え、竹光(たけみつ)だが道中差しを一本腰にぶち込んでいるではないか。

「親分、一体この格好は」

さすがの石松もびっくり。

「よく聞け石、アメリカは物質文明の国、食物、着る物、何でも街中に溢(あふ)れているんだ、ハリウッド映画を見ろ、真昼問からプールで戯(たわむ)れ、ロックをくちずさみながら芝生でのんびり昼飯を喰ってる奴ばかりだ、俺様はあくまで日本人の魂をを失いたくねえ、それでこういう姿で行ってやる、して石、金は集まったか?」

「へえ、片道の飛行機代だけは何とか」

「げんこつで、それだけの金が集まればオンの字じゃあねえか、向うに着けばしめたもの、あとは俺様にまかしときな、それにしてもずいぶんとでけえ奉加帳を作ったもんだなあ」

次郎長は石松の抱えている一米四方もあろう奉加帳をひったくるとページをめくってびっくりした。

「何だい、この名前は」

奉加張に書かれた第一番目は、

 

   田中角栄        五千万円

   中曽根康弘       三千万円

   王貞治         一千万円

   長島茂雄        一千万円

   若乃花         五百万円       

   黒柳徹子        三百万円

   美空ひばり       三百万円

 

「へえ、最初は景気づけで、八、九番目あたりから本当に金を頂いたかたがたと云うわけでして」

「まあいいや、とにかく何が何でもニューヨークにたどり着くんだぞ」

 

 

 


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