THE HIGH MUSEUM
ハイ美術館
住所 1280 Peachtree ,NE in midtown Atlanta
電話 (404) 733-4444
土 ~ 水 10:00-17:00
木、金 10:00-21:00
月 休館
入場料 6ドル
展覧会名 Norman Rockwell: Pictures for the American People
(ノーマン・ロックウエル:アメリカ人達のための絵画)
会期1999年11月20日 ~ 2000年1月30日
今世紀のアメリカで最も人気のある画家がノーマン・ロックウエル(1894年 ~ 1978年)であるのは、誰もが認める事である。その例を幾つか挙げてみよう。サタデー・イヴニング・ポストに(1916年から1963年まで)勤め始めた時、既に同誌は200万以上の部数を発行していた。彼がその表紙に掲載した作品数は322もあり、コマーシャルのイラストをジェーロ、クレスト等の日常食品広告用に描いた。1945年のニューヨーカー誌はロックウエルがボーイスカウト用に描いたカレンダーは毎日16億人の目に触れたと推定した。彼の死の2年前に、25年間過ごしたマサチュウーセッツ、ストックブリッジでのロックウエル・パレードには前代未聞の841万人が集まつた。また同地にあるロックウエル美術館には年間20万人が訪問する。
ノーマン・ロックウエルが人気があり、センチメンタルであるから彼がへたな画家であるか、まつたくその逆の大変うまい画家である。
良いアーティストは彼ら自身にとつて、何らかの意味のある言葉を持つている。顕微鏡で見たような本物らしさの彼の絵はさしおいても、彼自身の言葉である清々しい快楽さが洗練された美術評論家、美術史家を戸惑わせる。何故なら、簡潔なセンチメンタリテイをともなつたある種の快楽は良いアートは難解でなければならない、極端に言うと不快感をあたえるモダニズムの基本的信条を定義ずけるからである。専門家にとつて、悲しみと苦痛がほとんど見られない彼の絵は誤解を恐れずに描くなら少し軽薄であるのは否めない。
それ故に、1930年代自分自身のアイデンティティを求めパリに行き、本格的にアートを始めた。しかし、たつた7ヶ月でニューヨークー郊外のニューロシェルに戻り「私は日常生活上の普通の人々を描くだけで、ただそれだけだ」と白状した。
初期から、ロックウエルの作品は底流に非常に道徳的なものがあり甘つたるく、古いムードが漂う現実逃避主義で貫かれている。「人生は私がそうあるべきと思うよううにあるべき」とも説明した。
ロックウエルの1番の弱みは後期になり、政治的な真面目な作品を描いた1964年の
“The Problem We All Live With”(我々すべてが同時に生活している問題)である。この作品はニューオーリンズの人種無差別学校に通学する黒人の女生徒を描いたもので、自分自身の言葉を失つた代表作になつた。
後期になると、他のだれとも同じように日常的ではあるが複雑さを伴うようになつた。彼は彼の絵を見る者を信用し、彼が何者であるかを判断させ、その簡潔さが最高作品を生む彼の本質であり、また田舎のユーモアや本物と見間違うほどのリアリズムよりも見る者と供にあるのが人気の源である。それが彼の人気を長続きさせている基本でもある。
ロックウエルは急激に変化していくアメリカの単調な事実にほんの少しであるが、昔日の優雅さと快さ、自己完成した品位をあたえる事により、未来へ望みをあたえた。彼は小さなものが時々私たちが考える以上に重要なものである事を思い起こさせ、それは彼の絵に対しても同様な事が言えるであろう。