ジェームス・アンソール展
James Ensor : The Museum of Modern Art
6/26-9/21, 2009
James Ensor (Belgian, 1860–1949)
Skeletons
Fighting Over a Pickled Herring.
1891
Oil on panel, 6 5/16 x
8 7/16" (16 x 21.5 cm)
Musées royaux des
Beaux Arts de Belgique, Brussels
© 2009 Artists Rights Society (ARS), New York / SABAM, Brussels
ベルギーの前衛画家ジェームス・アンソール(1860-1949)のアメリカで初めての大きな展覧会。約120点の絵画や素描・版画が展示されている。
アンソールは不気味な仮面の人物や骸骨をモチーフにした事で知られる。生まれはフランダース地方北部の小さな町オステンドで、毎年マスクのカーニバルが催される場所。母方は小さなお土産店を経営していたことから、幼少よりマスクや民芸品などの雑貨に囲まれていた。アンソールは生涯をその町で過ごしたというが、17-20歳にかけてブリュッセルの名門ロイヤルアカデミーで絵画を学んでいる。本展が焦点を当てているのは、アンソールが最も活動的だったという1880年代から1890年後半で、アカデミー終了直後の十数年。ベルギーでは象徴主義美術が全盛のころ。アンソールは、仲間と共にモネやスーラーらも参加した前衛グループ20人会(Les Vingt)を創設しその会を通して積極的に作品を発表した。「キリストのブリュッセル入城」(1889年)という作品は、当時のブリュッセルしかもアンソール馴染みのオステンドのカーニバルを彷彿させるような設定で聖書の場面を風刺的に描いたもの。あまりの迫力に20人会での展示を拒否されたというアンソールの前衛画家らしい逸話がある。その作品は、カリフォルニアのゲティ美術館の所蔵。実は今回モマに貸し出されなかったエピソードがいくつかのニューヨークレビューに添えられているのが興味深い。
James Ensor (Belgian, 1860–1949)
The
Intrigue. 1890
Oil on canvas, 35 7/16
x 59 1/16" (90 x 150 cm)
Koninklijk Museum voor
Schone Kunsten, Antwerp
© 2009 Artists Rights Society (ARS), New York / SABAM, Brussels
アンソール20-30代に的を絞った本展からは、当時の画家が何を歴史とし何に関心があり、何を自分自身の新しい方向にしようとしたかがうかがわれ、現代の若い作家達にとっては表現の違いはあるにせよ似た葛藤や移行が共感できるのではないだろうか。会場の壁面のテキストには1890年以降、アンソールは同じモチーフを繰り返したと述べられている。ただその時代にも踏み込むことで画家アンソールがより詳しく見えたのでは、という思いも残る。(yoko yamazaki)